THE THEATER OF DIGITAKE
美穂のアルバイト日記 6/6


■一難去って・・・

難は去った。

私は気を取り直してオバさんを前にした。

「いらっしゃいませ」

左右のマユを交互に動かしながら、オバさんは言った。

「今の子、アナタの知り合いなの?」

私は特大クマのバーコードを探しながら、極力、オバさんと目を合わせないようにして答えた。

「いえ、別に」

「ふ〜ん」

視線は合っていないのに、オバさんがなめるように私を見ているのがわかる。

「優しいのね、アナタ」

意外な言葉だった。続けて彼女は、こう言った。

「子供の気持ちは大切にしないとね、ろくな大人に育たなくなっちゃうからね」

「そうですね」

少し緊張がほぐれた私はレジを売った。

「84,000円になります」

「アラ、そ〜お。じゃカードで」

「カードをお預かりします」

オバさんのカードを機会に通すと、程なくエラーのメッセージが出た。
2〜3度試したが結果は同じだった。

「あの、カードがうまく通らないので・・・」

その言葉を聞いたとたん、オバさんの表情が変わった。

「そんなハズないでしょ〜。ちょっと問い合わせてよ」

仕方なくカード会社に電話をすると、オバさんのカードは限度額オーバーだった。
私の口から言うのは、ちょっと怖いので、そのままオバさんに電話を変わってもらうことにした。

「何よ! 人に恥をかかせて!! もう、アンタんところのカードなんか使わないからね」

オバさんは、ものすごい剣幕でそう言うと、何も言わずに私に受話器を渡して、すでに長蛇の列となったレジを戻って行った。

オバさんの後をベソをかきながら着いていく孫の姿が、何とも可哀想だった。
翌月、異動になってしまった店長よりも・・・ね。

end.

written by ● master@digitake.com
Copyright (C) digitake 1998-1999 All rights reserved.


Back■