THE THEATER OF DIGITAKE
美穂のアルバイト日記 2/6


■休憩時間返上

私はレジに立った。

バイトには倉庫の整理や商品陳列の仕事が多いけど、それでは子供たちに接する機会は少ない。
バイトに入って間もなく店長に「レジをやらせてほしい」と言ったら、店長は私を頭からつま先まで見て「まぁ、女の子だし、いいか」と言った。

バイト仲間の中には、私が荷物運びが嫌でレジに行ったと思っている人もいるかもしれない。でも実際にはレジに行きたいと申し出る人は滅多にいない。レジを閉めた時、1円でも合わないといつまでたっても帰れないからだ。店長はお金の計算だけには厳しい人なのだ。

平日の午前中は比較的ヒマだ。
これが土日ともなるとレジは戦争のような状態になる。

その日も4列あるレジのうち、開いているのは私が立つ1番レジだけだった。

最近はおじいちゃん、おばあちゃんと孫というお客さんが多い。
昔からそうだったかもしれないけれど、昔は平日の昼間にオモチャ屋へ来ることなどなかったから、よくわからない。

あと、いかにも独り者という感じのちょっと暗い男の人。
かなり値のはる美少女フィギュアを山のように買い込んでいく。
売場で携帯電話なんかかけてるから、最初は競合店の人かと思ったけれど、どうもオトモダチと品番の確認なんかしているらしい。
生身の女の人を相手にするのは・・・まず無理ね。可哀想だけど。
そういえば、前によくテレビに出ていた宅八郎って、どうしちゃったのかしら?

午前中は平穏に終わった。

授業のない水曜日は、午後も社員同様に働く。
両親は、私が学校に行っているんだかバイトに出ているんだかも、よく知らないだろう。

控え室でお弁当を食べ終わると、休憩時間はまだ少し休憩時間が残っていた。
オモテで缶ジュースでも買って来ようとサイフを取り出していると、店長が血相を変えて控え室に飛び込んできた。

「あ! 神林さん。すぐレジに入って!!」

せっかくの休憩時間を台無しにしてくれたのは、レジのそばで店員に文句をつけていたオバさんだった。
見ると、平日だと言うのにレジには長蛇の列ができている。時々あるんだ。こういうことが。
レジの先頭にいたお客さんは、宅八郎・・・風の男の人。
どうやら、クレジットガードで高価な美少女フィギュアを買おうとして、クレジットの許可が下りず、とっかえひっかえ持ってるカードを出している様子だ。

オバさんは吠える。

「何よ〜、混んでるならほかのレジ開ければいいじゃない! どういうコトのこのお店は〜!!」

まわりには何人ものバイトが一見忙しそうに荷物を運んでいる。
オバさんの文句もわからないじゃないけど、あのバイトの人たちにレジは扱えない。みんな見て見ぬフリを決め込んでいる。

私は、あわてて2番レジを開けた。
1番レジに並んでいた4〜5組のお客さんが、ドッとこちらへ流れてきた。
オバさんは一番後だ。

あと1組でオバさんの番というところで、オバさんは孫らしい子供に裾を引っぱられて、列を離脱していった。孫といっしょだったのね。あんまり恰幅がいいんで、孫がかくれて見えなかった。

なぁんだ、こんなことならジュース飲めたのに・・・。
私のポケットで小銭がジャラジャラ音を立てていた。


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