THE THEATER OF DIGITAKE
彼女のハンカチ 3/4


■彼女のハンカチ

あわてて立ち上がったボクが、2、3歩前へ出ると、ちょうどボクの目の前に立ち止まったミウラ ヨリコが右手に持っていたソフトクリームを差し出した。

見ると、差し出されたソフトクリームのまわりには、さっき見た彼女の小さなハンカチが巻き付けられている。

ボクは、それをそっと受け取った。

「これ、あたしのオゴリよ」

ミウラ ヨリコは、そう言って、別の手に持っていたソフトクリームをペロリとひと口なめた。
口元がペコちゃんのようなカタチになってた。

さっきまで座っていたベンチを離れて、海ぞいの手すりに寄りかかりながら、ボクらはひたすらソフトクリームを食べた。
暑さに溶け出すソフトと競争をするように。

ミウラ ヨリコは、最後に残ったひと口分のコーンを手のひらで砕くと、パッとあたりにまいた。
するとバサバサッと音をたてて何羽もの鳩がボクらのまわりを取り囲んできた。

ボクもマネして、コーンを砕いてまいてみた。
また何羽かの鳩が寄ってきたのを見て、しゃがみ込んだミウラ ヨリコは何か嬉しそうだ。

さすがに観光地だけあって、まわりは人がいっぱいだ。
この暑さだというのに、ベッタリと寄り添って自分たちの世界にひたりながら歩くカップルも多い。

ボクらもまわりの人から見れば、カレシとカノジョに見えるんだろうな・・・きっと。

そもそもデートの定義というヤツがよくわからない。
好きな人といっしょにどっかで過ごせれば、それで楽しいものなんだろうけど・・・。

鳩を追うミウラ ヨリコは、楽しそうだ。
鳩の動きを楽しんでいるのか、それとも、そんな自分をボクがすぐ近くで見ているのを感じているのか。


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