THE THEATER OF DIGITAKE


彼女のハンカチ 作者による勝手な配役

ボク■(4年前の)滝沢秀明
ミウラ ヨリコ■(4年前の)宇多田ヒカル

アイスクリーム屋■牧しんじ

オサナイ キミコ■(中学時代の)永井美奈子
タナカ■(中学時代の)みのもんた


■暑い日曜日

「ハイ、これ使って! どうせハンカチなんて持ってないんでしょう?」

ミウラ ヨリコの言葉に、ボクは思わず両手をポケットに突っ込んだ。

「いや・・・平気」

公衆便所の前で額から汗をにじませながらボクを待っていたロングスカートのミウラ ヨリコも何となくマヌケな感じがしたが、トイレから出る時に手を洗って来なかったボクは、もっとマヌケだ。

中学生も私服を着ると、ずい分と大人っぽく見えるモノだが、やっぱりサイフの中味は、じゅうぶん子供で、ほんの小遣い程度しか入っていない。

同じ中学生でも女の方が多少は金持ちかもしれない。
かと言って、それをアテにするのも気が引ける。
そのくらいの気構えはボクにもあるんだから、あんまり子供あつかいにはしてほしくない。
確かにハンカチひとつ持ってないのは事実けれど・・・。

仕方ない。とりあえずベンチに腰を下ろして、しばらく話でもしてみよう・・・。
さて、何の話をすればいいのか?

ミウラ ヨリコもずっと黙ったままなので、ボクはちょっとカッコつけて遠くを見ていた。
こんな時、もう少し歳がいっていれば、ポケットからタバコなんか出して、もっとカッコつけられるのに・・・なんて思いながら。

ほとぼりがさめた頃を見計らって、そっと両手をポケットから出してみる。
いつまでも突っ込んだまま・・・というのも不自然な気がして。

だいたい、公衆便所でいちいち手を洗うなんてコト自体、ボクは無駄な行為だと思っていた。
そりゃあ洗った方がキレイには違いないけれど、どうせオモテじゃ誰が触ったかわからない手すりやお金をいじるコトだってある。
何かを食べる前に洗えば、それでいいはずだ。喫茶店に入れば、お手拭きだって出るだろうし・・・。


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