THE THEATER OF DIGITAKE
ハルヲの決心 3/5


■ハルヲの名演技

空港のトイレで早速、白衣姿になったハルヲは、到着ロビーを見回した。

観光シーズンでもないのに、日本人客は多い。ビジネスだろうか。しかし、ハルヲにとってそれは絶好のチャンスであった。
団体は面倒だ。多くても2〜3人がいい。

そこへ初老の2人の男が通りかかった。いかにもスケベそうなオジさんたちだ。
おもむろに近づいたハルヲは、2人に話しかけた。

「実は、日本大使館の方から来たんですが・・・」

一瞬、ギョッとしてハルヲの方を振り向いた2人は、白衣姿にまた驚いた様子で、しげしげとハルヲを見た。

「何か・・・あったんですかね?」

「いや、実は非公式の活動なんですが、最近、ここでエイズに感染する日本人男性が多いもので、その予防のために活動をしている者です。こちらへはお仕事で?」

2人は顔を見合わせながら言った。

「一応、仕事ではあるんですけども・・・」

その様子を見て「これは、いける」と思ったハルヲは、少し強い口調で言った。

「こちらで現地女性と遊ばれるご予定は?」

「そりゃあ、ない・・・とも言えんかもしれんが」

「それでは、こちらへ」

ハルヲは2人をロビーの陰へ連れていった。そして、白衣のポケットから薬瓶に入れたマーブルチョコを取り出して言った。

「あくまで非公式なので、保険は適用できませんが、万が一のことがあるといけませんので、これをお飲みいただきたい。ご滞在予定は?」

「3日間の予定ですが」

「それでは、お一人、3錠ずつ。計6万円になります」

「ろくまん?!」

驚いて顔を見合う2人。すかさずハルヲは強い口調で言った。

「エイズにかかってもいいんですか?!」

2人は、すごすごと3万円ずつハルヲに差し出した。
ハルヲは薬瓶から取り出したマーブルチョコを3つずつ、用意していた銀紙に包んで渡した。


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