THE THEATER OF DIGITAKE
ハルヲの決心 2/5


■ハルヲのヒラメキ

「来週から出張するよ。海外だから、ちょっと長くなるけど心配しないで」

ハルヲが、そう田舎の両親に電話して、降り立ったのは東南アジアのとある空港。
もちろん出張のはずはない。
かと言って、遊びに来られるほどの余裕も・・・あるはずはない。
ハルヲにとって真剣な仕事に違いはなかった。

この計画を思いついたのは、失業して3日目の朝。
カップラーメンをすすりながら、テレビのワイドショーを見ていた時のこと。

画面には繰り返し流線型をした錠剤が映し出されている。
バイアグラだ。
若いハルヲにとっては、女性に不自由はしてもコッチに不自由はない。

自分とは関係のない話題・・・と思って見過ごしていたが、消化器販売店の社長が、かつてバイアグラのことを話題にしていたことをフト思い出した。

「ぜひ使ってみたんモンだがね。でも、ちょっと怖いね。ヘタに飲んで死ぬのもイヤだし」

その日、珍しく社長の話にのってきた中年の営業マンは、こう答えた。

「処方箋書いてもらえばいいんですよ。医者に」

「でも、何か恥ずかしいだろ?」

そうこうしているうちに、社員全員が話に割り込んだ。

「薬なんかに頼るより、イイ女とするのが、一番の薬でしょう?」

「しかし、高いだろ? 小遣い程度ですむのは、ウチの娘と変わら年子だし、そりゃちょいと・・・」

「社長! 海外でしょ、やっぱり東南アジア 行くのだって国内旅行より安いし。物価も安い。もちろんアッチだって・・・」

社長をはじめとする全員が、そう言った男の顔をのぞき込んだ。

「安いって・・・どれくらい?」

「私のデータによれば・・・絶品の美女でも、まぁ日本の10分の1」

「10分の1と言うと?!」

「数千円の世界ですなぁ」

「絶品の美女が、数千円???」

息をのむ一同。しかし、その沈黙をやぶったのは自分のコトにかけては、きわめて心配性の社長だ。

「しかし、そうなると今度は病気が怖いねぇ・・・」

その時のことを思い出したハルヲは、ハタとヒラメいた。
そのヒラメキを実行するために、ハルヲが用意したものはマーブルチョコと1本の注射器。ビタミン剤。白衣。そして、車を買おうと貯めていた金をはたいて買った東南アジア行きのチケットだ。

とりあえず一週間くらいここで稼いでやろう。
ホテル代や遊ぶ金は、稼いだ中から出せばいい。

自分のヒラメキに酔ったハルヲは、とにかくそこまではよく考えて、ここまでやってきた。


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