THE THEATER OF DIGITAKE |
作者による勝手な配役
ハルヲ■見栄晴 |
■ハルヲの送別会 「実は、消防署の方から来たんですが・・・」 ハルヲがそう言いながら、定価の3倍もする消化器を訪問販売するのも今日が最後となった。 この3ヶ月でハルヲが売った消火器は、全部で26本。 あと4本・・・。せめて30本以上売りさばいていれば、首はつながっていたかもしれない。 「まぁ景気が良くない時期だからな。仕方ないわな」 名目上はハルヲの送別会である会費制の飲み会で社長は、そう言った。 ハルヲを除く、全社員3名はもうすっかり出来上がっていて、ハルヲのことなど眼中にはない。 ハルヲの隣にどっかりアグラをかいて、チューハイをなめるように飲む初老の社長だけが、かろうじて送別会の雰囲気をとどめていたが、その社長の話に耳をかたむけるのはハルヲ以外にいなかったので、社長はひたすらハルヲの肩を叩いてだけなのかもしれない。 「キミには、ちいとトモダチが少なかった。もう少し協力してくれるトモダチがいればな。もう少し我が社でのチャンスも広がったかもしれん」 うつむいて、ジョッキのビールをチビチビやっていたハルヲは、その言葉を聞いてハッとなった。 なんだ、研修期間3ヶ月だなんて言って、結局、知り合いに消化器を売らせるだけのコトだったのか・・・。 ハルヲの顔が曇ったのを悟った社長は、あわててこう付け加えた。 「トモダチがたくさんいればな。悩みも相談できるし、キミももっと頑張れただろう? まぁ、研修期間ではあったが、一応、失業保険も出るから、まぁ人生の勉強をしたと思えば、我が社での経験も決して無駄にはならんよ」 もう、どうでもいい・・・とハルヲは思った。 |
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