THE THEATER OF DIGITAKE |
作者による勝手な配役
男 ■イッセー尾形 女房■ひし美ゆり子 新人■武田真治
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■取締役室 ここは30数年の歴史を持つ、ある会社。 高度成長期に社員をたくさんとり過ぎて、今や成長はおろか、社員を養っていくのが、やっと。 しかし、取締役の部屋はリッパだ。 その専務取締役の部屋に、ひとりの部下の男が呼ばれた。 年は40半ば。 「はい、お呼びでしょうか?」 「おお、来てくれたか・・・忙しいところスマンが、個人的な用でな」 部下は部屋のドアを閉めて、一歩前へ進んだ。 見渡せば、10畳ほどの室内は、まるで引っ越しの最中のように乱雑としている。 「実は、この部屋の中があまりに乱れておるので、かたづけようと思い立ったが、ごらんのあり様。乱れるばかりで一向にはかどらんで困っとる」 「はは」 これは、かたづけを手伝わせるために呼ばれたんだな・・・と男は思った。 しかし、重要書類で埋め尽くされた自分の部屋をいじらせるというのだから、俺も結構、買われているんじゃないか? 「いやいや、キミにかたづけを手伝えと言うわけじゃあないんだ。荷物運びだけを頼むくらいなら、キミのようなベテラン社員を呼び出すまでもない。・・・ただ、いつ見てもキミの机のまわりは整理整頓がいきわたっておるのを知っていたんでな。かたづけ方についての意見を聞こう・・・と思ってな」 「は、私でお役に立てるのであれば」 まぁ、それならなそれでもいい。それにしても自分のやり方が認められているのには変わりないのだから・・・と男は思い直した。 |
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