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◇境内(世) 「キャーッ!! やめてよー、そんな話!!」 老人の話に耳をかたむけていた少女は、その場にしゃがみ込んでしまった。 「すまん、すまん、別に怖がらせるつもりじゃなかったんじゃが・・・」 少女は狛犬の下にうずくまったまま立とうとしない。 「まぁ、そんことがあって、この神社では祭りごとをやらなくなってしまった・・・というわけじゃ」 少女をなだめて立たせようとした髭の老人は、懐中電灯をその場に置いた・・・その瞬間、あたりは真っ暗になった。 しゃがんだままの少女は異変に気づいた。 さっきまで聞こえていた盆踊りの太鼓の音が聞こえない。 そっとあたりを見渡すと、正面に目をむいた老人の顔が見えた。 「何? どうしたの?」 老人は震えながら少女の後を指さした。 少女がふりかえると、そこあったはずの狛犬は、キバをむいた大蛇となって、今しも座り込む少女をまる飲みにしようとしている。 声も出せない少女は、また思い切り目を閉じた。 すると、かすかに老人の声が聞こえてくる。 「やめろ! やめろ! やめろ! 」 その声は、繰り返す度に何故か、老人の声から若い男の声に変化していった。 「その声は・・・!」 今度は背後にいる大蛇の方から女の声がした。 しゃがみ込んだ少女が覚えているのは、ここまでだ。 |