第5回祭りの夜 6/7

www.digitake.com

◇境内(世)

「キャーッ!! やめてよー、そんな話!!」

老人の話に耳をかたむけていた少女は、その場にしゃがみ込んでしまった。

「すまん、すまん、別に怖がらせるつもりじゃなかったんじゃが・・・」

少女は狛犬の下にうずくまったまま立とうとしない。

「まぁ、そんことがあって、この神社では祭りごとをやらなくなってしまった・・・というわけじゃ」

少女をなだめて立たせようとした髭の老人は、懐中電灯をその場に置いた・・・その瞬間、あたりは真っ暗になった。

しゃがんだままの少女は異変に気づいた。
さっきまで聞こえていた盆踊りの太鼓の音が聞こえない。
そっとあたりを見渡すと、正面に目をむいた老人の顔が見えた。

「何? どうしたの?」

老人は震えながら少女の後を指さした。
少女がふりかえると、そこあったはずの狛犬は、キバをむいた大蛇となって、今しも座り込む少女をまる飲みにしようとしている。

声も出せない少女は、また思い切り目を閉じた。
すると、かすかに老人の声が聞こえてくる。

「やめろ! やめろ! やめろ! 」

その声は、繰り返す度に何故か、老人の声から若い男の声に変化していった。

「その声は・・・!」

今度は背後にいる大蛇の方から女の声がした。

しゃがみ込んだ少女が覚えているのは、ここまでだ。

次●