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◇境内(後) 「おい! 起きろよ」 ボーイフレンドの声に目を覚ました少女は、ハッとなって、まず狛犬から身を離した。 「何寝ぼけてんだ? こんなところで、うたた寝なんかしちゃってさ」 盆踊りのメロディと太鼓の音がこだましてくるのを確認した少女は、ニッコリ笑うボーイフレンドをキッとにらんだ。 「遅いじゃない?! あんたが来るの遅かったから、ものすごく怖い目に遭ったんだから!!」 ボーイフレンドは、ただキョトンと少女を見た。 「そんなの夢だって! さぁ、早く行かないと盆踊り終わっちゃうぜ。急ごう」 ボーイフレンドに手をひかれ、立ち上がった少女の足に何かが当たった。 そこには髭の老人が持っていた懐中電灯が転がっている。 「やっぱり夢じゃない・・・」 振り返ったボーイフレンドは、仕方なく少女の話を聞くことにした。 「白い髭をはやしたおじいさんがね・・・」 「白い髭の・・・ああ、知ってるよ、その人」 ボーイフレンドは少女の言葉をさえぎった。 「この境内の見回りをしてた人だろ?」 「そう! たぶん」 「この町内じゃあ有名なジイさんでね、独身の、変わり者だよ」 「へぇ〜、じゃあこの懐中電灯返しに行かなきゃ」 「え? うちのオフクロが先週行ったよ・・・そのジイさんの葬式に」 |
おわり