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◇見せ物小屋(一) 「親の因果が子に報い、生まれてきたのがこの子でござい・・・」 毒々しいヘビ女の絵が掲げられた小屋の入口のわきに台を据え、呼び込みをしているのは、決まって声がつぶれた片目の男だった。 男は壊れた竹刀のような棒きれで後の絵を指しながら、またある時には白く透き通った巨大なヘビの抜け殻をかざしながら、一心不乱に客を呼び込む。 ヘビから生まれた少女、あるいはヘビに育てられた少女など実在しているわけがない。 それでも観客たちは興味本位、怖いモノ見たさで次々とゴザで中が見られないようになっている小屋の入口をくぐって行った。 ほどよく客が集まるとショーの始まり。 たいていは水着姿の初老の女性が、大蛇を首にかけて踊ったり、大蛇の好物である生きた鶏を食べさせるところを見せたりしている。 この小屋でやっていることも基本的には変わらなかったが、ただひとつ違っていたのは、登場するヘビ女が年の頃なら15、6の少女だったこと・・・だ。 全身にオイルを塗りながら出番を待つ彼女は、小屋の外から聞こえてくる決まり文句、 「親の因果が子に報い、生まれてきたのがこの子でござい・・・」 この言葉を聞く度に、借金で首がまわらなくなった父親。そして、この小屋に売られてきた日のことを思うのだった。 |