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思い起こしゃあ、あっしがこの地面の上へニョキっと顔をのぞかせた頃は、まだその辺りには犬小屋ひとつ建っちゃいなかった。 当時は、まだ背が低かったあっしにも、かなり遠くまで見渡せるほど、辺りにはなんにもなくて。 むこうの地平線のはしには田んぼがあって、毎日同じ格好をした連中が来ては腰をかがめたまんま、一日中ずーっと何かやってるところが見えたモンです。 時々、そのうちの一人が、こっちの方へやって来ると、田んぼの方へ背中を向けて、あっしに向かってピューッと水をかけた。つまり、ションベン。 考えてみると、あの連中はあっしの育ての親かもしれねぇなぁ・・・ハッハッ。 そんなお陰もあって、あっしはズンズン大きくなった。 だけど、あっしが隣でいつもあっしを見下ろしていたひまわりよりも大きくなって、人間の身の丈もはるかに超えるようになると、辺りの様子はずい分変わった。 まわりに家が建ちはじめたモンで、田んぼはすっかり見えなくなっちまった。 やがて、あっしはそんな家より高くなって、家の上からも向こうが見えるようになりやしたが、そん時にゃあ、田んぼがあったあの辺りもすっかり家で埋め尽くされていやしたよ。 |