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鎖につながれた母犬に同情して、そうは言ってみたものの、子供たちがもらわれて行ったのは2年も前の話。 そう簡単に見つかるわけはなかった。 途方に暮れたノラ犬は、何度か母犬のところへ謝りに行こうと思ったが、その度にあの真剣な母犬のまなざしを思い出しては、引き返していた。 そんなことを何度か繰り返すうちに、あの母犬の家の三軒ほど並びの家に2年ほど前から犬が飼われているという話を同じノラから聞いた。 もしや・・・と思って訪ねてみると、やっぱりあの母犬の子供らしい。 あいにく、その犬は室内犬として飼われていて、ガラス越しにしか話ができない。 庭からそっと忍び込んだノラ犬は、中にいる犬に話しかけた。 「このウチの三軒ほど先に、あんたの母親がいるんだ。会いたいだろう?」 室内からキョトンとした表情でノラ犬を見た室内犬は、こう言った。 「母親って何? ボクは生まれた時からこのウチにいるんだよ」 この返答に絶句したノラ犬だったが、耳をピンと立てると 「いいから行ってみよう! さぁ、ここを開けて出て来いよ!!」 と叫んだ。 が、室内犬は動こうとしない。 まどろっこしくなったノラ犬は強引にそのガラス戸をこじ開けようとしたが、その音に気づいて奥の部屋から人間が来てしまった。 あわてて庭を茂みに隠れたノラ犬は、シッポをふりながら人間の方へ近づいていく室内犬の後姿を見送った。 |