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こんな日々が、何日か続いていった。 10日ほどたったある日。 意を決したピッコ朗は、大八車にありっだけの楽器と小さな舟を積み込んで、少女が現れる時刻より、少し早めに川べりに着くと、川を渡った。 少女は、その日も規則正しく、その場所へ現れた。 ピッコ朗は、ここぞとばかり笛やら太鼓やらを鳴らし始める。 しばらくは、いつものように地面を見つめていた少女も、さすがに無視できず、初めてピッコ朗の顔をジッと見た。 とうとう自分の方を向かせることができた! さぁここからが本当の腕の見せどころだ・・・とピッコ朗は思ったが、少女と目があったとたん、顔はこわばり指は自由にならない。 仕方なく笛を持つ手を下ろしたピッコ朗は少女に向かって言った。 「な、なに、見てんだよ?」 少女は見透かしたように答えた。 「見てほしかったんじゃないの?」 笛をにぎるピッコ朗の手に思わず力がはいった。 「おまえ、耳が聞こえないのかと・・・思ってよ」 少女は、えくぼを見せて言った。 「聞こえていたわ、最初から・・・。でも声をかけてくれなかったから」 ピッコ朗の大きなため息が、カマイオの谷にこだました。 |