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第1回■ピッコ朗の初恋 1/3

カマイオの谷は、豊かな自然に恵まれた実に住みやすい場所だ。

四季折々に果物が実をふくらませ、谷間を流れる川をつつけば、いつでも新鮮な魚を手に入れることができた。
カマイオの谷に住む人々は、そこでの何不自由ない暮らしに満足し、日々を過ごしていた。

ピッコ朗は、この谷に住む一族の末っ子の末っ子。今年で15歳になる。

生活に必要な日々の仕事は、もうとうに役割が決まっていて、一人前の体つきはしていても、とくにこれといってやることはない。

ヒマを持て余していたピッコ朗に、ばあちゃんが一本の横笛をくれたのは、もう5年も前の話だ。

今では、もう笛を吹かせたら右にでる者はいないほどの腕。
最も、この谷で笛を吹くのは、ピッコ朗ただ一人だが・・・。

ばあちゃんがくれた笛をもとに、自分で木を切り出してきて、もっと大きな笛や太鼓まで作ることも覚えた。

彼が毎日得意になって演奏する楽器の音色は、カマイオの谷をこだましてツカト山のふもとくらいまでは届いたが、聞いているのは草や木だけ。
それでも彼は、とりあえず満足していた。
自分の腕に酔いしれている時が、ピッコ朗にとっては何よりの幸福な時間だった。

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