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いつものようにピッコ朗が自慢の笛を吹き鳴らして、川べりを歩いていると、川向こうに見なれぬ人影を見つけた。 最近、周辺の村では作物の育ちが悪く、カマイオの谷の方まで果物を探して足を伸ばしてくる者がいるというが、きっとそんな人だろう・・・。 と、よく見ると、それは花を摘む少女の姿だった。 ふと笛を吹く手をとめて、しばらく少女の方を見ていたピッコ朗は、やがて気づかぬふりをして、いっそう力強く笛を吹きはじめた。 しかし、川のせせらぎが邪魔をしているのか・・・、少女はピッコ朗に気づく気配もなく、そのうちに両手いっぱいの花を抱えると、さっさと森の中へ消えてしまった。 彼は笛を吹いていて初めての不満を覚えた。 ひとりで吹いていた時には、感じたこともない気分だ。 目の前に現れた初めての観客に、自慢の笛の音は届かなかった。 次の日も同じ時刻に、ピッコ朗は川べりにやって来た。 今日は昨日より大きな笛を抱えて。 はたして・・・少女は現れた。 ピッコ朗は、力いっぱい笛を吹き鳴らす。・・・だが、今日も少女はピッコ朗と目を合わすこともなく、森の中へ消えてしまった。 |