Episode No.879(20010620):何を望まれているのか?

最近、本や雑誌のことを、よく「紙媒体」なんて言い方で呼ぶ。
文字を伝えるのにも・・・
こうしてホームページや電子本、デジタル雑誌と言われるモノが増えてきたからね。

今から411年前・・・1582年6月10日。
長崎の港に、それまで一般の日本人は目にしたこともない機械が上陸した。

・・・活字印刷機だ。

1582年にローマに派遣された少年使節団の案内役も務めたイタリア人宣教師が
日本での布教活動に役立てようと持ち込んだモノ。

宗教にせよ、政治にせよ・・・はたまた親子男女の仲にせよ
人間に「伝えたい」という欲求があったからこそ
印刷機も無線機も発達を遂げてきた。

時代は変わっても・・・その向こう側にいるのは、いつも人間。

だから、いかにさまざまな伝達手段が発達したところで・・・
伝えたいものや、感じとれる気持ちがなければ、何も役には立たない。

それは、インターネットを介そうが、面と向かって話そうが・・・同じことだろう。
確かにコミュニケーションの仕方は異なるし
それぞれに長所短所はあるけれど・・・そんなモノは枝葉の話。

基本は、やっぱり人間関係。

人間関係がうまくいかない・・・なんてセリフもよく聞くけれど
それはイコール、人生がうまく回ってないってことだと思う。

ごくたまに・・・
人間関係はうまくないんだけど、仕事だけはできる
なんて人がいるような話も出るけど・・・実際、見たこともないなぁ、そんな人。

もし、そういう人が本当にいたとしたら・・・おそらく機械と競争してるんだろうな。
それは、普通に頑張っている人から見れば、すごく滑稽なこと。
だって、ブルドーザーと力比べをしているようなモンでしょ。

普通に頑張れない人に限って・・・極端なことをしようとする。
まるで、普通に頑張ることから逃げ出した自分の弱さを隠そうとするように。

だけど結局・・・
何から自分を守りたいのかと言えば・・・やっぱり自分以外の人。
つまり、そういう人でさえ・・・本当に意識してるのは人間、なんだよね。

宰相・田中角栄は、時に自分の部下をこう言って戒めた。

「跳ねるのはいいが、池から飛び跳ねて戻れなかったら日干しになるぞ」

もちろん「跳ねない蛙なんて、蛙でいる価値はない」
・・・とも言ったと思うけど、ね。

活版印刷機が日本に一台しかない時代じゃないんだから・・・
そんなに意識過剰にならなくたって
できることは、たくさんあるはず。

何ができるかは・・・よく周囲を見渡せばわかるはず。
わかんなかったら・・・何をするより、まず黙って精進するしかない。


参考資料:「今日は何の日」PHP研究所=刊
     「究極の人間洞察力」小林吉弥=著 講談社+α文庫=刊