Episode No.407(991215):もうひとつの目的
1832年の今日12月15日。
フランスに現代もなお、その名を世界中に知られる男が誕生した。
アレクサンドル・ギュスター・エッフェル。
そう、エッフェル塔の設計者である。
自国文化をこよなく愛するパリジェンヌたちは、312mのこの塔をパリタワーとは呼ばずに設計者の功績を称えエッフェル塔と名付けたのは知っての通りだ。
57歳にして、この偉業を成し遂げたエッフェルは、もともとは建築学ではなく航空力学の研究者だった。
そのエッフェルが、パリ万国博覧会の巨大モニュメントの設計を引き受けるまでには、幾多の葛藤があったに違いない。
しかし、航空力学者としての彼には、フランス国民の賛美を集めること以上の目的があった。
それは、高さ300mからの落下速度を測る・・・という実験がしたかったのだ。
言うなればエッフェル塔は、航空力学者エッフェルの巨大な実験装置だった・・・とも言える。
生きていくということは、広い意味で言えば、仕事をし続ける・・・というコトだ。
寝たり、食べたりするのも生きるための仕事であるし、その寝床や食べ物を得るために稼ぐことは言うまでもなく仕事中の仕事。
しかし、それだけでは何ともむなしい・・・。
その生きるための仕事を通じて、自分は何をしたいのかを探るのも大きな仕事であり、それは楽しい仕事である。
金のためだけ・・・と言うのなら、今の職業よりもっとワリのいい仕事は世の中にたくさんあるだろう。
それでもなおかつ今の仕事をしているからには、自分と仕事との間にきっと何かがあるはずだ。
仕事を続けていく中で、それが少しでもわかってくると・・・こんなに楽しいコトはない。