文部省のおエライさんと、本田宗一郎の実際の会話。
「本田君、中国というのは素晴らしい国だよ。ハエもいないし、道路には紙クズひとつ落ちていないんだ」
「へぇ〜、そうなんですか」と関心しないのが本田宗一郎のオモシロイところ。
本田はすぐさま、こう答えた。
「ちょっと待ってください。中国に製紙工場がいくつあって、どれくらい生産しているのかを調べたんですか。紙が不足している国に紙クズが落ちているはずないですよ。日本だって戦争中はタバコが足りなかったから、街を歩いていても吸いがらなんて落ちていなかったでしょう」
もちろん、これは何十年も昔の話で、現在の中国の事情がどうかは知らない。
昨日の話の続きにもなるが、やはり常識をうち破ることができる人間は、真実を見る目を持っている・・・ということだ。
悪く言えば、疑り深い。よく言えば好奇心旺盛で探求心がある。
新しい時代を切り開いていくのは、いつでもこういうタイプの人間に違いない。
そういえば、朝焼けより夕焼けの方が赤く見えるのは何故か。ご存じだろうか?
これにはれっきとした科学的根拠がある。
そもそも空が青く見えるのは、太陽からふりそそいだ光が、大気中に乱反射するためである。
海の青さが反射しているだけでは、陸上の空の説明はつかない。
朝夕に、この空が赤く見えるのは、太陽の傾きによって光が斜めにふりそぞくため、その過程で大気がプリズムレンズの役割をはたして、青や緑の光は上空にそれて、オレンジや赤の光しか地上からは見えなくなるためだ。
では、朝焼けより夕焼けの方が赤く見えるのは何故か?
それは、空気中のチリや排気ガスが乱反射しているためである。
昔はきっと、朝焼けも夕焼けも、それほど赤さに違いはなかっただろう。
だからキレイな夕焼けを見たかったら、できるだけ空気の汚れた街に行った方がいい・・・ということになる。
そんな夕焼けを本田宗一郎が見たら、きっとこう言うだろう。
「キレイな夕焼けだなぁ。でも公害はいかん。もっと薄い夕焼けが見たいな」