18年前…
こんな文章をここに書いた。

＞昔、知り合いに・・・
＞「ギターの腕なら誰にも負けない」と言い切る男がいた。

＞実際、奴のギターの腕はものすごくて・・・
＞一流の演奏家ともセッションをしていたし・・・
＞確かスタジオ・ミュージシャンみたいなコトもやってたんじゃないかな。

＞「こいつは俺にないモノを持ってる」・・・と、よく思ったものだ。

その男は一級下でカミさんと旧知の仲。

一時はよく奴のライヴにも行ったものだが、
仕事の関係で地方に移り住んで行ってしまってからは
年賀状のやりとりしかなかった。

演奏の腕前だけでなく、作曲の腕も相当なもので、
映画を作ることばかり考えていた自分は、
いつか自分の映画に奴の曲をつけてもらおう
…などど、勝手に考えていた。

素人ながら
時折、取り憑かれてように物語を書く時には、
モチベーションを維持するために、
まずイメージに合う曲を選定し、
書いている間、その曲を何度も繰り返し聴く。

まさに今、書いている物語は
奴が昔作った「春泉」という曲を聴きながら書いている。

ところが今年、奴からの年賀状はなかった。
代わりにカミさんの元へ悲しい知らせが届いた。

年末、奥さんの実家で脳溢血で倒れ、
そのまま帰らぬ人になったというのだ。

葬儀も、まだこれからだ。

もう少しで何か
具体的な相談ができたかもしれないというのに…。

少なくとも
奴との約束は忘れていないことを
伝えることはできたはずだ。

いつか、この曲を
オーケストラを使って演奏させてほしい。
…奴はそう言っていた。

じゃあ、俺の映画のサントラで。
…なんて何の根拠もない軽口を叩いていたけど。

Ｎ！「傾城塚奇譚」のテーマ曲は、これしかないよ。

それでも、人生日々更新。