ベン・シャーンを知ったのは
久しぶりに立ち寄った本屋だった。

このところすっかり美術づいていたので、
足はおのずと美術書コーナーに向かっていた。

「芸術新潮」という月刊誌が目に入った。
素朴な、それでいて力強いタッチの
ペンを握った無骨な手のイラスト…
その表紙に誘われて手に取ってみた。

新進気鋭のイラストレーターの作品かと思った。
…が、違っていた。
ベン・シャーンという
半世紀も前に活躍していた現代作家の作品だった。

翌週…
いつものように「日曜美術館」を見ると、
そのベン・シャーンの特集をやっていた。

あのゴジラ誕生のきっかけともなった
第五福竜丸のビキニ環礁での
核実験による被爆事件。

その悲惨な事件を
強烈なインパクトで絵本にしたのもシャーンだった。

福竜…は直訳するとラッキードラゴン。
シャーンのラッキードラゴン・シリーズを
収蔵しているたは皮肉にも、ラッキーアイランド
…福島県立美術館だった。

神奈川県立近代美術館 葉山館で開催されていた
20数年ぶりのベン・シャーン展に行ってきた。
今月は２度目の美術館だ。

あの力強い拳も、ラッキードラゴンもあった。

たまたま開催されていた
学芸員の開催秘話レクチャーも聞けて、
ベン・シャーンも、
そして美術館そのものも
ますます身近に感じることができた。

そして美術館を出たとたん目に飛び込んできた夕日が
その印象をさらに強く心に焼き付けた。