さて、今日もちょっと寅さんの話…。
「男はつらいよ」という物語の凄いと思うところは、
シリーズの長さより何より、
物語の中に完全な悪者が登場しないことだと思う。
勧善懲悪の物語を作るのは、わりと簡単だけれど、
悪者一人出てこないのにドラマを盛り上げるのは至難の技。
寅さんシリーズにおいて、
些細なことから巻き起こる身内のケンカは見所のひとつだが、
そのケンカがいかにも身内のケンカに見える大きな理由は、
今書いたように、ケンカの原因が些細なことであること…。
そして、別な大問題が起こると、
たって今まで言い争っていた者同士が、
何事もなかったように力を合わせるところだね。
例えば「ハイビスカスの花」においては…
とらやのご一行が珍しく店を休んで、
弁当持ちで花見に出かけようとしていると寅が帰ってくる。
久しぶりに帰ってきた寅さんに
留守番をさせるのは忍びないと考えて、
出かけないふりをする一行。
やがて不自然さに気づく寅は
「身内の俺にどうして気を遣うんだ」と怒り出す。
妹さくらも
「どうして、たまにしか帰ってこないお兄ちゃんに気を遣っちゃいけないの?」
…と言い返す。
そこに一通の速達が…
昔なじみのマドンナ、リリーが旅先で病で倒れたという知らせ。
大げんかをしていた一同はパッと気持ちを切り替えて、リリーの心配をする。
…まぁ、こんなクダクダ書いたものを読むより、観た方が早いけど…。
こういう見方をすると、また面白さも増すし、
実生活の見方さえ変わるかも、ね。