名作とそうでないものの違いに気づいた。 …名作は「経験」になるんだ。
それも「残る経験」に。
十代の頃。 寺山修司の映画をよく観たな。
ストーリーなんて覚えてないし、 覚えるべきストーリーなんてなかっただろう。
ただ…痛烈に体験した。
スクリーンから呼びかける男の声。
妹がよってたかって犯されている部屋の扉を 叩き続けた兄が、やがて崩れ去る姿。
あんまり楽しい景色は残ってない。 むしろ辛い感覚や痛い感覚、 目を背けたくなるような光景の方が… 作品を通しても、現実の上でも 経験としては残っている気がする。
残っているもの…というのは、 つまり消化できずにいるものなのかもな。
受け入れがたい現実もそうだし…。
そういうものは好んで名作で味わって… 現実ではすぐに忘れてしまえるようなことが 多い方が…幸せなのかも、な。