Episode No.3502(20091116)
稲取旅情

何が旨いといって、
その土地で採れた新鮮な食材ほど
旨い物はない。

いかに高級な食材が
高くても売れる都会に集中するとはいえ、
その土地の空気の中で食さない限り、
本当の味を感じることはできない。

伊豆・稲取は熱海から電車で1時間ほど下った港町。
その距離は東海道から約47kmというから、
ちょうど東京-横浜間くらいだね。

新鮮な海の幸と温泉でもてなす
古くからの旅の宿が軒を連ねている点は、
熱海あたりと変わりはないが…
素朴で静かな雰囲気は、
この辺りまで足を伸ばさないと味わうことは難しい。

漁港に面した東伊豆町庁舎の駐車場では、
土日と休日の午前中、朝市が開かれている。

伊豆・稲取の朝市-digitake.com

伊豆・稲取の朝市名物「釜飯」-digitake.com水揚げされたばかりの新鮮な魚介類をはじめ、季節の野菜や果物が格安で手に入るとあって、会場内は朝から大賑わい。

名物・金目鯛の入った煮込み汁が無料でふるまわれている。
真夏より、ちょうど今頃の方が、その暖かさは嬉しい。つい、700円也の釜飯にも手が伸びてしまう。

会場に流れているのは新人歌手(?)の演歌。
波に上下して見える何隻もの漁船にピッタリのBGMだ。

伊豆・稲取の漁港-digitake.com

演歌には「昭和」の臭いがする。
だからというわけではないが、この場所は「昭和」そのもの。

「昭和」も「平成」も…
「20世紀」も「21世紀」も関係ない。

時代や新しい道具にふりまわされてはいるが、
人間自体は何ら進化していない。

時代にあったもの…より、
人間にあったもの…が大事だな、と
田舎町の空気は教えてくれる。

都会のペースに追われて悲鳴を上げているのは、
自ら冷蔵庫に入り込んで、
寒い寒いと身を縮ませているようなものだな。

時々はこうして、
いい空気を吸って伸びでもしないと、
生きている喜びを忘れてしまいそうだよ。

※かつて書きかけた「旅の記憶


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