秋晴れが続く。
朝夕は寒いくらいだがバイクにはいい季節だ。
とは言うものの…
ハーレーはしまいっぱなし、
乗っているのはもっぱら原付。
朝の渋滞をすり抜けるには、
やっぱりこっちの方が楽ちんだ。
マンションの前を通りかかったら…
急に自転車が飛び出してきた。
原付が近づいていることなど、
まったく気づいていない…というか見てない。
乗っていたのは女子高生。
ちょっと待て!
今、左右も見ずに飛び出してきたな。
事故にでもなったら、
その可愛らしい顔にキズを残すことになるかもしれない。
…で、好きな人ができた時、
そのキズがコンプレックスになって近づくことができない。
挙げ句、自分よりブスだけど、
はるかに積極的な娘にとられて…
しかも後で片思いしてた人も
本当は自分のことを好きだったことを聞かされ、
今度は心にキズを残すことになる。
やけになっているところを
チンピラみたいな男につかまって覚醒剤を打たれ、
或る日警察に一網打尽に…。
何もかもから逃げ出したくて流れ着いた先は青森。
温泉宿に住み込みをしていた或る日、
定年を迎えたあの初恋の人がやってくる。
残念ながら一人では来ない。
年はとっているけど品のいい奥さんと息子夫婦。
そして孫にかこまれて楽しそうに過ごしてる。
それを君は客室の布団を敷に行く時に
深くうつむきながら見るんだ。
ああ、あの時…
家を出る時にちょっと右左を確認すれば、
自分はあの幸せそうな一家の輪にいたかもしれないのに。
そうなってもいいのか!!
…って、よっぽど言ってろうかと思ったが、
女子高生はそのままスイスイ走ってしまうし、
…こっちも遅刻しそうだからやめた。