Episode No.3447(20090912)
ニガい哲学
三島由紀夫・著「レター教室」より

『レター教室』からの最後の出典は、
作者・三島由紀夫自身から読者に贈る手紙から。

「世の中を知る、ということは、
 他人は決して他人に深い関心を持ち得ない、
 もし持ち得るとすれば
 自分の利害にからんだ時だけだ、
 というニガい哲学を、
 腹の底からよく知ることです」

…『作者から読者への手紙』

この世に生まれてきたからには、
何か自分でなければできない役目を負っている
…と信じることに間違いはなし
…そうでも信じてないと、やってらんない。

しかし、それは…
自ら世間に空間を見いだし、
そこに居場所を作り、広げてゆくということで、
世の中が自分のために
席を空けて待っていてくれるわけではない。

そうした「ないものねだり」の
勝手な思いをふくらませておいて…
自分が思ったようにいかないから
「世間に裏切られた」なんて感じているのは
…そもそも認識不足。

無一文で買い物に行き、
金を要求されて怒る奴はどうかしているだろ。

世の中に対する認識を深めようとして、
自分に都合のいい思い込みばかりしてしまうのも
…弱さの象徴。

すべては「認める」ことからはじまる。

どんなに苦しいことも、
考えられないような大馬鹿野郎がいるのも、
一生懸命やっただけでは
何一つうまくいかないのも
…それが現実。

そんな世の中に自分が生きている
…ということが、まず現実だよ、な。


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