Episode No.3233(20090106)
表現の所在

本棚の奥にあった写真を
ふと手にとって見る。

「東海道五十三次・いまむかし」

昔、お茶漬けのおまけにもなっていた
歌川広重の東海道五十三次の絵と、
同じ場所から見た
大正時代、そして現在の写真が
見開きに並んでいる。

あらためてそんな一冊に
興味を持ってながめていたら・・・
TVの歴史ミステリー特集で、
歌川広重が実際には
東海道五十三次の旅には
行っていなかったらしい、という
検証をしていて、見入る。

広重が旅したとされる頃には
焼失していた寺院が描かれていたり・・・。
あるはずの山並みが省略されていたり・・・。
石橋が木の橋として描かれていたり・・・と
矛盾がいくつも見つかる。

そのうえ、広重が五十三次を描く、
なんと50年前に描かれたという
広重の描いた構図にそっくりな絵まである。

あいにく外出のために
番組の最後までは見ることができなかったが・・・
広重という人は腕の確かな絵描きであった
・・・ことに間違いはないが、
今で言えば、
アレンジャー、あるいはリメイク
・・・のような仕事をした人のようだ。

過去に描かれた
モノクロの線画を多色刷りにしたり、
複製が難しかった絵柄を
数の刷れる版画に起こし直したりしたのが
・・・どうやら広重の東海道五十三次。

本当は最初から
そういう目的で作られた絵かもしれないが、
あまりに有名になり過ぎてしまい、
あたかもオリジナルとして
世に伝えられてしまったが故に、
今になって盗作疑惑が騒がれることに。

今のみたいに著作権がうるさい時代でもないから
・・・無理もないかな。

そもそも完全なオリジナルなんてあるのか
・・・と疑いたくなることもしばしばだけど、ね。

しかし・・・広重の仕事には
後世に伝えられる何かがあったに違いない。