Episode No.2926(20080105)
大型自動二輪挑戦日誌

最終回●新人ハーレー親父誕生

◆最後の2時間

あいにくの雨模様。本降りというほどではないが、バイクで走るのはすべりそうだし、帰りには本降りにる可能性も高いので軽の愛車「ミゼット」で教習所に向かう。

こういう日はいつにも増して億劫。しかも全教習最終日のみきわめがある。
しかし、当日キャンセルすればキャンセル料をとられてしまうので金欠に後押しされて何とか到着。

幸い路面はさほど濡れていない。
最後の2時間は、ほとんど自主トレ。検定コースをひたすら回る。
どうにかコースはだいたい頭に入ってきたようだが、コースのことばかり考えて走っていて、スラロームのタイミングを誤り、ポストにひっかかって転倒。
倒れた直後にキルスイッチでエンジンを切り、車体を起こし、再スタートするのも、もうすっかり手慣れたものだが、ここにきて自信を喪失してしまうそう。

最後の1時限は検定用のバイクに乗る。普段のボロ教習車に比べると格段にいい。

時折、教官が併走して一本橋やスラローム、波状路通過のタイムを測ってくれる。
まだ一本橋はタイムぎりぎりだが、中免の時はタイムを気にしすぎて2度も落下しているので、今回は走り抜けてしまうくらいでいこうと思う。

その他、注意された点・・・
●カーブはもっとスピードを落として小さくまわる。
●急制動はブレーキをかけ過ぎず、規定距離いっぱいを使って止まる。
●降車時は、必ずエンジンを止めてから降りる。

かくして12時間に及んだ教習課程はすべて終了してしまった。
とりあえずダブリもなくみきわめ合格証を受け取ることができた。

まぁ、中型の時も同じで、ここからもうひと山、地獄の緊張感が待っているのだが・・・。

日曜日の卒検の予約を入れて帰る。
さて、この教習所を訪れるのは次回で最後の一回となるかどうか・・・。

帰りは結構な雨が降っていた。車で来て正解。
普通免許をとってから20年以上経ってるせいもあるけど・・・しかし、車ってのは何て楽チンな乗り物なんだ。

「ミゼット」は660ccだが、さっきまで乗ってたバイクは750ccだ。

愛車ミゼット

◆卒検前夜

朝が早いので、夕べは早めに床についたのに・・・緊張して眠れない。こんな思いは、いつ以来のことか。
ウトウトしかけたところに朝刊を配達するバイクの音がして、またバチッと目が覚めてしまう。
2時間くらいしか眠れず、それでも緊張感で眠気も感じない。いよいよ決戦の場へ・・・。

◆そして卒業検定

集合時間の30分前に到着し、ひたすらコースの復習。
ようやくお呼びがかかって、普通自動車、普通二輪の受験者と共に教室に入り説明を受ける。
検定のコースは1号だった。しかし、苦手だと思って1号コースばかり見ていたので何とかなりそうだ。
大型の受験者は5〜6人いて自分は3番目。まぁ、いい順番ではないか。
コースに出て、順番を待つ。寒い。が、気になってやはりオモテで待つ。トイレに行きたいような気がしたり、行ったら順番を呼ばれるような気がしたり、ひたすら不安。

そして順番がまわってきた。
2人の教官に併走されながら走り出す。普段の教習と違って、ウォーミングアップなしで、いきなり走り出すので最初が何ともぎこちなくなってしまう。早く終わりたい気持ちに押されてスピードを出し過ぎて、カーブで曲がりきれなくなつては最悪だ。とにかく落ち着いて、できるだけゆっくり走ることを心がける。
急制動は今までで最高の出来。コースを半分くらい回った頃、ちょうど1時限目が終わったとみえて、教習中の車やバイクが一斉にいなくなる。実にラッキーだが、同時に失敗に対する言い訳も一切なくなってしまった。実力のみが試されることへ一段と緊張が走る。
本来10秒かけて渡らなければならない一本橋だけは、落ちたら一発で失格なのでイッキに走り抜けてしまった。
試験の時間は15分くらいだろうか・・・すごく長く感じたけど。
降りる時に立ちゴケしないよう細心の注意をはらって試験終了。

ようやく校舎の中に入って、一服する。
1番に試験を受けていた若者とお互いの労をねぎらいつつ会話がはずむ。まず日常だったら、耳にイヤリングをした若者とこんな風に和気あいあいと話すことなどあり得ないだろう。
しばらくすると中型の卒検を受けたという若者が話しに割り込んできた。まだ合格したわけでもないのに、目一杯先輩ぶって「大型をとりたいならコースを覚えてるうちに続けて教習に通った方がいい」などと助言したりする。

再び教室への集合がかかる。
担当教官が入ってきて「全員合格」を告げた。ホッとする。中型の時のことを思うと一発合格は奇跡じゃないかと思う。
受験順に点数が告げられる。なんと70点。合格ラインぎりぎり。まさしく奇跡だった。
失格になるような大きなミスはかろうじてなかったものの、一本橋は規定の半分の5秒で渡りきってしまっているし、細かな減点が多いのは、普段の運転でついた癖でバックミラーは見ても実際に振り返っていないことが多い点。
しかし・・・受かってしまえば、こっちのものだ。

寝不足のうえ、朝から何も食べていないというのに、教習所を出るとその足で中古バイク屋に向かった。

本当は2007年10月に国内発売されたばかりの「XL1200N=ナイトスター」がほしかったが、新車にはとても手が出ないうえ、今頼んでも納車は3月以降になるというので、カタチがよく似た同じく足つきのいい「XL883L」を見たかったのだ。
中古車とはいえ2007年車だけあってピカピカだった。細心のインジェクション仕様でエンジンの始動もメチャクチャ楽。キャブレター仕様じゃないと、というこだわり派も多いようだが、こっちの方が無精な自分には合ってる。

結果、ローンが通ったので・・・購入をその場で決定。
乗っていった「PS250」に付いているETCの付け替え工事をしてもらいたいので、「PS250」をその場で下取りに出して、電車で帰ることに。まさかここのでの走りが「PS250」最後のご奉公になろうとは・・・。だが、ハーレーを目の前に・・・躊躇はない。

さよならPS250
●でじたけのバイク遍歴●

◆免許の更新

バイクが来ても免許を書き換えないと乗れないので翌日も朝一番から動く。
考えてみるとここのところ誕生日が来て免許を書き換えたことはない。前回は中型をとって書き換えた。ちょうど来年の誕生日は書き換えの予定になっていたが今回も前倒しして書き換え。
交付を待つ間中、このことを知っている関係者に電話をかけまくる。みんな「おめでとう」と言ってくれる。この年になると、子供が入学して「おめでとう」と言われることはあっても、直接自分のことで「おめでとう」と言われる機会はまずない。

一生懸命お金を貯めて何か買う・・・という達成感も確かにあるけれど、普通に働いていれば手が届くものや、容易に組めるローンで簡単に手に入れたものが何の自慢になるというんだ。
・・・などと言いつつ、また120回ものローンを組んでしまったけれど、いくら借金したってハーレー・ダビットソンにゃ、大型免許がなければ乗れない。
教習所にいくら金を払ったって、何もせずに免許はもらえない。
自分にできることを増やすこと・・・これに勝る喜びはない。

免許の書き換えから10日後・・・私はハーレー親父になった。

そして挑戦はつづく・・・?