THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行27 8/10


■2度目の訪問

ウエディングドレスの大きな箱を後部座席に積み込んだ宮田は、一路、三村のアパートへと向かった。

明日の朝はジェーピー物流へ直行の予定だし・・・第一、仮に会社に出ることになっていたとしても、こんな大きな箱を持っては行けない。
三村に電話で事情を話すと「課長さえ、よろしかったら・・・」と言ってくれた。
なんせ準備には時間がない。今日できることを明日にまわしているヒマはない。

三村の住む町へ来るのは3度目。
最初のドライブの時と・・・最後のドライブの時と・・・。
一度、電車で来て部屋で鍋物をごちそうになった。
アパートの部屋へ入れてもらうのは、今度が2度目になる。

ウエディングドレスの大きな箱はアパートを階段を上がるには、ちょっときつかった。
何とか箱を立てて持って、ようやく部屋の前にたどり着く。

「課長! ずい分、早かったですねぇ」

「ああ、慣れた道だし・・・いゃあ、道路も空いてて」

「どうぞ上がってください」

三村の部屋は、あいかわらずキチンと整頓されている。

「今、お茶を・・・コーヒーの方がいいかしら」

「いや、お茶は後でもらうよ。それより早速、これを見てほしい。・・・お茶こぼしちゃうとマズイし」

少し顔を赤らめた三村は、宮田に言われるがまま、大きな箱に近づく。
宮田がフタを開くと、三村の瞳がキラキラと輝いた。

「わぁ、ステキなドレス!」

「そ、そうか気に入ってもらえそうかな?」

「課長、ちょっと着てみていいですか?」

「えっ? 着替えるの、ここで? でもなぁサイズのこともあるし、そうした方が・・・いいかぁ」

「やですよ課長。隣の部屋で着替えてきますから・・・のぞかないでくださいよ」

「も、もちろんだとも」

箱から取り出したドレスを抱えて、三村は隣の寝室に入っていった。
ひとり待つ宮田には、壁にかかった時計のカチカチ言う音が、やけに大きく聞こえてきた。


Next■