THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行27 7/10


■妻の宝物

早めに自宅へと戻った宮田は、まず鈴木に電話をかけることにした。
花嫁衣装の相談以前に・・・やはり、どうしても仏滅の挙式には抵抗があった。

「・・・鈴木クン。そういうわけで本当に申し訳ないんだが今回は挙式はなし・・・ということで。もちろんパーティーには来てくれよ。・・・・2人にもこの点は謝らなくてはと思ってるんだ。まったくドジな話で」

「課長・・・何も謝ることありませんよ」

「そうはいかんだろ?」

「私、挙式やらせていただきます」

「だから仏滅なんだよ」

「仏滅・・・関係ないです。私がやるのはキリスト教式ですから」

「あ! ・・・そういうもんかね? キリスト教式なら仏滅は・・・」

「はい。関係ないです」

「そりゃあ、よかった!! うんうん。じゃあ、はりきって頼むよ」

問題は、ひとつ解決した。
結婚式の準備で残る問題は衣装の件。

妻との媒酌人の打ち合わせは、例によって食事をしながらだ。

「できるかしら・・・私」

「できるも何もおまえは、ただいっしょにいればいいんだから・・・問題ないだろ。問題は・・・衣装だ」

「そうそう、何着たらいいのかしら? やっぱりお着物・・・」

「おまえんじゃなくて、花嫁のさ。借りるのは簡単だけど、時間がないからなぁ・・・好みにあったのが選べるかどうか・・・」

「花嫁衣装?」

「うん」

「ドレスでいいのかしら?」

「キリスト教式だから・・・ドレスだろうな」

「だったら、ありますよ」

「え?」

茶碗に、あとひと口のゴハンを残して、妻は寝室へ向かった。宮田も後へ続いた。

ベッドの下から大きな箱を取り出した妻はホコリを払いながら、それを開く。
中には純白のウエディングドレスが丁寧にしまわれている。

「ああ、よかったムシ食ってなくて・・・」

「おい、これ」

「そうよ。私が着たヤツ・・・」

「あれ借りたんじゃなくて買ったんだっけ?」

「ええ、どうせ世理子も着るだろうからって・・・でも、世理子は、もう無理ね。妊娠してたらお腹が入んないわ」

「もったいないな・・・」

「だから、どうです? どうせ借りるくらいなら使ってもらったら・・・ウチには女の子もいないし、使う機会もそうそうないでしょ」

「そんだな、相談してみるとするか・・・しかし、これは見ないことには・・・」

宮田はベッドの枕元に置いた時計に目をやった。8時を少し過ぎたところだった。


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