THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行27 3/10


■鈴木の転職先

「み、三村クン?」

「・・・只今留守にしています」

そうだ! 今頃、柳と三村はお互いの両親の元へ挨拶に行っているところだ。いるわけがない。
仕方なく、そのまま電話を切って、とりあえず年賀状を元あった場所へ戻そうとつかみ直すと、輪ゴムが切れて床にばらまいてしまった。

拾い上げていると、ふと1枚の年賀状が目にとまる。
几帳面だが小さく・・・何となく自信のなさそうな字・・・リストラとなった鈴木からの年賀状だ。

来年は・・・来ないだろうな、年賀状。
ところで彼は今、どうしているんだろう?
正式な退職は今月末だが、有給をとって休んだままだ。
はたして再就職先は決まったんだろうか・・・。

鈴木の年賀状にはシッカリと電話番号まで書かれている。
彼もうちの課の一員だったことには違いない・・・課の打ち上げを兼ねた柳と三村の結婚パーティには呼んでやるべきだろう。
宮田は再び受話器をとった。

「・・・はい、貝殻坂教会です」

「えっ?! あ、あの鈴木さん?」

「はい、鈴木です」

「その声は鈴木クンかね?」

「ボクをクンづけて呼んでくれるのは・・・課長・・・ですか? お久しぶりです。すいません社に顔も出しませんで」

「そりゃ構わないが・・・どういうことかね? ナンカト協会って・・・。何か慈善団体でもはじめたのかね?」

「はぁ・・・慈善団体には違いないんですが・・・。うち実家がキリスト教の教会なもので・・・。ボクもとりあえず教会を手伝うことに」

「じゃあ・・・牧師かね?」

「一応・・・まだ見習いですが」

「そりゃあ都合がいい! 実は・・・」

鈴木とさんざん電話で話してダイニングに行くと・・・昼食の蕎麦は、すっかりうどんと化していた。


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