THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行27 2/10


■ダンドリーの集中力

土曜日。午前10時の開店とともに家の近くの本屋に飛び込んだ宮田は、結婚式のマナー関係の本を5冊もまとめ買いした。

目的を達すると、すぐに家に戻り、買ってきた本をとっかえひっかえに開いてはレポート用紙にメモをとる。
土曜も日曜もない専業主婦の妻がそれをのぞきこむと

「打ち合わせは昼飯を食べながらにしよう。それまでに要点をまとめておくから」

と言い放って、また背中をまるめる。
もうすぐ昼になろうかという時間になって、ようやく肩をまわして伸びをした宮田はひとりつぶやいた。

「なんだ、媒酌人なんて・・・簡単じゃないか。最初に2人の経歴を紹介する程度で・・・あとは座ってればいいだけだ」

思えば、自分の結婚式の時だって、友人たちの時だって・・・媒酌人はお飾りのようなものだった。

「2人の経歴は・・・と。2人の経歴? 人事部に聞けばわかるか? いや、それよりまず本人たちに26日のことを話さなきゃ!!」

「あなた、お蕎麦ゆでましたけど・・・」

そう言ってリビングをのぞき込んだ妻をよけて、宮田は電話口へと急いだ。

「えーと、三村、三村・・・あった!」

一度は電話したことのある番号だ・・・あの温泉宿から。
プッシュボタンに手をかけた宮田は、はたと気がついた。
やっぱり、こういう話は・・・柳クンの方へ先にすべき・・・かな。

柳の自宅の番号は・・・しまった社員名簿は会社に置きっぱなしだ。
そういえばヤツから届いた年賀状に電話番号が出ているかも知れない。
今年の年賀状なら、まだそのへんにまとめてあったはずだ。

年賀状の束は、すぐに見つかった。
柳のは・・・汚い字だから、すぐわかる。
あった! しかし「謹賀新年」のゴム印が押してあるだけで、電話番号どころか住所も書いてない。困ったヤツだ。

仕方ない・・・ということで、やっぱり三村に電話をする。

「はい、三村です・・・」


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