THE THEATER OF DIGITAKE |
■前話の最終ページ |
■宮田浩一郎の贈り物 宮田浩一郎が人に贈り物をした中で最も高価だったのは、妻への婚約指輪だ。 当時、月給の3ヶ月分・・・などというコマーシャルが流行ったために、そうせざるを得なくなってしまったが、浅草橋の問屋で購入したおかげで本当のところ2ヶ月分とちょっとで済んだ。 はたして、あの指輪が月給の1ヶ月分、いや半月分だったら妻は怒っただろうか? ・・・決してそんなことはないだろう。 でも、わずかな貯金をはたき、ほしかった車を買うのを延期して、自分のためだけに指輪を買ってくれたと思えば・・・ヒョイと簡単に買い与えた物よりは、はるかに嬉しかったはずだ。 その後もきわめて平均的なサラリーマンとして車を買い、建売住宅も買ったが・・・。 家族のためというのは大義名分で、実は家族のために自分が人並みのことをしてやっていると思いたい・・・という気持の方がはるかに大きかったりする。 人が喜んでくれれば自分も嬉しい。これは、すごく健康的な発想だと思う。 そういう意味で浩一郎が最も「健康」を感じたのは・・・ひとり息子の良樹が生まれた時のことだ。 妻はぐったりしてて、自分は何をどう手続きしたらいいものか、やたらとあせっていて嬉しいだけじゃ済まない状況にいたが・・・。 かけつけた自分や妻の両親が手放しで喜んでいるところを見ていると、ようやく親孝行の真似ごとができたと思ったものだ。 見返りを望まない本当の愛があるとするなら・・・やはり親子の関係だろう。 でも、それは自然が用意してくれていたもので、自分が努力してつくったものとは違う。 しかし、もはや見返りを望めない者のために、一生懸命になれたら・・・。 本当の愛をつかめるかも知れない。 |
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