THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行26 6/12


■ダンドリー魂復活!!

あっけにとられて周囲を見渡す2人。やがて会津が口を開いた。

「電気・・・来たまんまだったのかぁ。誰が電気代払ってたんだろう? ・・・あ! ウチか」

「そりゃあ、ジェーピーで処理してたとしか考えられませんなぁ」

「基本料金だけとはいえ、とんでもない無駄づかいしてたわけですな。いや、ヒジョ〜にお恥ずかしい」

ようやくオモテの寒さから救われた宮田は、どんどん奥へ入っていく。

「それにしても壊すのがもったいないくらい、まだキレイですね」

「しかし、商売にならなことには・・・壊して更地として売るしかないでしょう。とにかく本社としては今期の見通しがたったもんで解体費用だけは出してくれるそうです。ただ、6月の株主総会対策で収支をクロにもっていかなきゃならんもんだから、月内に不動産業者に権利を渡して・・・決算書上の体面を保ちたいんでしょうなぁ」

「・・・・」

「そんな経費があるなら、ウチの事務所建て替えるなり、もう少しマトモな人を入れてほしいもんだが」

宮田はふいに会津を見た。あわてた会津は思わず言った。

「いやいや、宮田さんのことじゃないですよ、断じて。私が言ってるのは現場の作業者のことで・・・」

「会津さん」

「は、はい」

「それで私は何をすれば?」

「あ、ああ肝心なことを・・・。つまりですな、ここの解体作業責任者として、すぐに動いてほしいわけです。本社からの急な話なもんで、うちでは仕切れる人間がいないんですわ。期末でバタついているところにもってきて・・・」

「わかりました」

「よかった。じゃあ本社の方へは、あらためて私からもお願い・・・」

「いいんです。どうせ本社には、もう私の仕事なんかない」

「・・・・」

「会津さん。そのかわり協力していただきたいことがあるんです」

宮田のベッコウ眼鏡が、ひさしぶりにキラリと光った。


Next■