THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行25 7/9


■柳の野心

柳は馬刺を実にうまそうに食べる。さすがは九州男児。
焼酎のボトルもすぐに2本目となった。

宮田や三村の緊張もすっかりとけて・・・きわめて自然な感じだ。

「で? 柳クン、どうするのかね? 結婚式とか、新居とか」

「そこなんスよ、課長」

「そこなんです、課長」

「そこって・・・何が?」

「こういう時期だし・・・何も大げさな結婚式なんてやる必要ないって、私・・・言ってるんですけど」

三村は、そう言って柳を見た。
柳は、あいかわらず焼酎をストレートでドボトボ手酌しながら言う。

「そういうわけにはいかないっショ。そりゃあ俺や・・・キミはよくてもだよ。キミのご両親は、キミの花嫁姿を楽しみにしてるだろうし・・・。親戚だってサぁ」

「柳クンの言うことはわかる。もちろん三村クンの言うことも・・・。だから、ここは間をとって、身内を中心としたものにしては・・・どうかな?」

「いゃあ課長・・・。それもいいんスけどね。俺・・・ちょっと考えてることがあるんスよ」

「何?」

「盛大な結婚式をして、みんなに集まってもらって・・・あらたな門出を」

「そりゃあ、あらたな門出だろうけど・・・」

「いや、課長。俺たちだけの門出じゃないんです」

「どういう意味かね?」

「俺・・・会社辞めて、自分で商売はじめようと思ってるんス」

黙って聞いていた三村が思わず身を乗り出した。

「何よ? そんな話、私聞いてない!」


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