THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行25 6/9


■・・・乾杯

柳が案内したのは『馬刺』という大きなノボリが立つ居酒屋だった。
奥座敷に腰を下ろすなり、柳は焼酎をボトルで注文した。

「おいおい柳クン、大丈夫かね? まだ月曜だって言うのに」

「大丈夫っス。ここの焼酎は。・・・それに今日はお祝いっスから」

「お祝い? 何の?」

柳は少年のように身をかがめると、横に座った三村をチラリと見た。
三村が決心したように話しはじめる。

「あの課長・・・実は・・・」

と、姿勢を正した柳が口をはさむ。

「いや! やっぱり、こういうことは男の俺がハッキリ言うべきだ。・・・課長、この度、私たち・・・結婚することになりました」

宮田は目を閉じて唇に一瞬力をこめた。三村はうつむきかげんに、それを見ている。
やがて、ゆっくりと目を開いた宮田は目の前の2人を交互に見ながら言った。

「・・・おめでとう!」

「ありがとうございます!! 真っ先に課長に知らせたくて・・・」

柳は顔が崩れるほどの笑顔を見せた。三村も何となく力が入っていた肩を下ろしてニッコリとした。

「いや、こちらこそ、ありがとう! 2人ならきっとうまくいく。きっと!」

焼酎が運ばれてきた。宮田と三村はお湯割、そして柳はストレート。

「では、お2人の末永い幸せを願って・・・乾杯!!」

宮田は少し熱めのお湯割を・・・イッキに飲み干した。


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