THE THEATER OF DIGITAKE |
■前話の最終ページ |
■次のステージ 男同士、女同士に比べて、男と女の関係は、ある一線さえ越えてしまうと想像以上にカタイものになるんじゃないだろうか? ある一線が、もちろん肉体関係である場合は多いのだが・・・。 たとえ精神的な関係であっても何となくモヤモヤしていた「何か」をどちらか一方が「うっかり」でも吹き飛ばしてしまうと、いきなり一心同体の関係となってしまう。 共同体となった二人は、自分たちのまわりにある、さまざまな問題を打破していく度に、そのつながりを強固なものにしていく。 それが、たとえ良いことであっても・・・あるいは悪いことであっても。 ただし問題なのは、さまざまな人生経験を積んでいく中で、お互いが同じ理想の方向に向かって変わっていけるかどうか・・・だ。 『あの素晴らしい愛をもう一度』じゃないけれど「昔はよかった」なんて、今を否定したようなことをひんぱんに思うようになってしまったら、二人のズレは相当なものになっていると言わざるを得ない。 人間が芸術に惹かれるのは、それが普遍的な価値を持つものだから・・・だろう。 裏返せば、普遍的なものなど日常生活の中ではあり得ないことをイヤと言うほど知っているから・・・とも言える。 今日という日は二度と来ない。明日は今日より確実に歳をとっているし。 入社以来変わらずに会社に忠誠だけを誓って生きてきた宮田浩一郎は、時代によって会社の価値観が変わったとたんに自分の人生を見失いかけている。 言われたことだけやっていれば、とりあえずつかむことができたささやかな幸せが、たとえ錯覚であったとしても・・・。 できれば錯覚のまま終わってくれた方が本人にとっては幸せだったかも知れない。 しかし、時代はそれを許さないところまで来ている。 一方、相手に自分の思いをはじめてぶつけてしまった三村しよりは、そこで初めて自分の気持ちを知ることになった。 一度知ってしまったことは、もう知らなかったことにはできない。 あとは「残り時間」に後押されてでも・・・とにかく前に進むしかない。 |
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