THE THEATER OF DIGITAKE |
■前話の最終ページ |
■父の口癖 「男が一度こうと決めたことは、必ずやり通さにゃいかん」 実にありふれた言葉かも知れないが・・・。 雪深い北海道の山間部で死ぬまで郵便配達の続けていた父の言葉に、宮田浩一郎はことあるごとに深い感慨を覚えていた。 たとえ父のような公務員でも、自分のようなサラリーマンでも・・・。 生涯をかけて職務を全うするというのは大変なことだ。 歳を重ねれば重ねるほど、その思いは増すばかり・・・。 だが、宮田にとって生涯を全うしようとした仕事は、いとも簡単にその方向性を変えられてしまった。 最近は父のように全うできる仕事がもてることの方が幸せなんじゃないか・・・という気持ちも時おり心をよぎる。 せめて目先のことだけでも、やり通せれば・・・。 確かに仕事のうえでは目先の問題をよくこなしてはきた。 "ダンドリー宮田"と異名をとるほどに。 しかし、それは決して自分がやろうと心に決めて挑んだことではなく、会社の命令で動いた、いわば尻拭い的な仕事ばかり・・・。 本当に自分がやりたいことに関しては・・・何ひとつできてない。 最期のチャンスも・・・モノにできなかったし。 自分に残された唯一の大仕事は・・・建売住宅のローン返済だけ・・・か。 |
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