THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行22 10/11


■ダンドリーの不覚

「おーい! こっちだ! こっちだ! この部屋だから」

叫んでいるのは番頭の声のようだ。
その声が聞こえるやいなや、ドカドカとフスマが開いた。

「何があったんです?」

「お客さんのお連れの方。露天風呂で鼻血吹いてひっくり返ってて。いや〜、驚いたの何の」

「えっ? 課長が?」

番頭の太い眉が動いた。

「・・・課長さん、なんスか?」

一瞬、顔を赤らめる三村。が、宮田のことが心配だ。

「で、その人は?」

「あ、来た。来た」

そこには担架で運ばれる宮田の姿があった。その顔は茹でだこのように真っ赤だ。

「何でも湯船に眼鏡落として・・・それを探しまくってるうちにノボせちゃったらしいんですわ。お酒も結構飲まれてたようだし」

布団に寝かされた宮田は、まだ意識がもうろうとしている。

「とりあえず頭冷やして・・・意識がはっきりしたら、できるだけ水飲ましてやってください」

「すいません。お騒がせして・・・」

「いゃあ、よくあることですから・・・こういう場合」

宮田の枕元にミネラルウォターを置いた番頭はニヤニヤしながら部屋を出て行った。

三村は洗面所で手ぬぐいをしぼると、宮田の額にあてて心配そうに寄り添った。


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