THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行22 9/11


■二人の距離

宮田を送り出してしばらくすると女中が器を下げに来た。
三村は窓ぎわのソファーに移動して、かたづけが済むのを待った。

まだ4分の1ほど残った『清酒 男爆発』をチビリとやりながら・・・窓を少し開いて、風を楽しんだ。

「失礼します」という声とともに女中たちが出ていったので、部屋の中に目を移す。
さっきまであったお膳が隅によせられ、ノリのきいた二組の布団が並んで敷かれていた。

三村は内心ドキリとした。こうなることは、わかっていたはずなのに・・・。
立ち上がって布団の近くまで歩く。
二組の布団の距離は50cmくらい空いている。

部屋のスペースには、まだいく分余裕があった。
無理に引き離そうとすれば・・・1mくらいは空けられなくもない。

試しにやってみる。
やはり、ちょうど1mくらい間が空いた。
しかし、それぞれの布団は壁や障子に密着して・・・いかにも不自然だ。

もう一度、元に戻そうとしたら、今度は少し間が詰まって30cmくらいになった。
掛け布団を整えると、二組の布団はほぼ密着しているようにも見える。

さらに少し離しして40cm。
密着しているような、それぞれが独立しているような・・・非常に微妙な状態だ。

そんなことをしている自分が何となくバカみたいに思えて・・・。
三村は再び窓ぎわのソファーに腰を下ろして酒をチビリとやった。

正面を見ると・・・大きめの姿見があった。

そういえば湯上がりから何の化粧もしていない。
素顔の自分を見られることは、宮田相手なら、もう何の抵抗もないが・・・。

・・・とりあえず化粧だけは、し直しておこう。

三村がバッグから化粧道具を取り出していると・・・何やら廊下の方が騒がしい。


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