THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行22 6/11


■番頭のお薦め

サシミの味も山の中とは思えないほど上等なものだった。
無論、宮田にとってこの状況の中では何を口にしても大満足に違いない。

「ねぇ課長・・・じゃなくて、コーちゃん?」

「うんうん、何? しよちゃん?」

「せっかくおサシミ美味しいから・・・日本酒にしない?」

「おー、そうしよう、そうしよう」

宮田は早速、床の間の電話をとるとフロントをまわした。
番頭が答えた。

「お酒ね、ございますよ〜。何がよろしゅうございましょう?」

「そんなに種類があるの・・・かね?」

「ありますとも! ウチの旅館は温泉のほかに日本酒が自慢でね」

「そう。お勧めは・・・何か?」

「う〜ん、ちょっと辛口なんですけどね。・・・今夜のお客さまにお勧めの逸品をお持ちしましょう」

「じゃ、それで・・・」

「はは。お楽しみに」

日本酒が届くまで、焼き物の方から先に手をつけていると、やがてフスマの向こうから女中の声がした。

「お酒お持ちしました」

差し出された720ml入りの酒瓶には金色のラベルに真っ赤な文字で『清酒 男爆発』と書かれていた。


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