THE THEATER OF DIGITAKE

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第22話 もう一度、不倫旅行<後編>

■宮田浩一郎の自己分析

自分がしたくて、したくてたまらないこと・・・なのに。面と向かって、それが言えない。

考えてみると宮田浩一郎の人生は、そんなことの連続だった。
かと言って、したいことをしないで来たのか・・・と言えば、決してそうではない。
したかったことは、ある程度やってきた・・・つもりだ。

思春期には恋もしたし・・・。
年相応にプラトニックなものから・・・A、B、Cへと発展したことだってあった。
最もCの場合は、プラトニックから発展したものじゃなくて・・・つまり、それを商売にしている人が最初のお相手だったが。

もちろん就職もして、結婚もして、子供も産まれて・・・建売とはいえ一国一城の主にもなった。

しかし、あたらめて思い返すと・・・。
どれひとつとっても自らが主導権をもって進めたことなど・・・皆無に等しい。

その時、その時で自分をリードしてくれる人がそばにいて・・・。
自分は、これ幸いと・・・それに乗っかってきただけのことだ。

会社では仕事のできる男・・・"ダンドリー宮田"なんて呼ばれて、悪い気はしていなかったけれど。
それだって、与えられた目標を淡々とこなしてきたに過ぎない。

自分で決めていたはずの自分の人生は・・・いったい、どこにあるのだろう?

人間ひとりきりで生きていけるものではないさ・・・なんて、今の自分が言ったところで、それは自分に対する言い訳にしか過ぎないだろう。

そうだ・・・おかげで行き着いた先は、左遷。

だけど・・・。
据え膳食わぬは男の恥・・・とも言うし・・・。

よし! 明日から、宮田浩一郎は生まれ変わることにしよう。

だから、今夜は・・・。


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