THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行21 7/10


■しよりの手作り弁当

当然、宮田はコンビニの弁当よりも三村の手作りの弁当を優先して食べた。

「ああ、おいしかった」

「本当? よかった」

「三村クン・・・じゃなかった、しよちゃんの手料理を食べさせてもらうのは、これで2回目だけど本当に上手だね。・・・きっと、いいお嫁さんになるよ」

三村の顔がちょっと曇った。

「・・・そうかしら」

マズイことを言ったかな? せっかくのこんな時なのに・・・。宮田はすぐにフォローを入れようと思ったが、うまい言葉が思いつかない。
とりあえず自分の両手を広げながら別の話題に転じた。

「あ〜、おしぼり・・・あったっけ?」

「あ! それなら・・・あれ?! 車の中かしら? とって来ます」

三村はそう言うと、一番景色のいい場所に敷かれたレジャーシートからスクッと立ち上がって、車に向かう。

「あれぇ? コーちゃん、カギかかってる〜!!」

「ゴメン、ゴメン。ついクセで・・・」

ややベタついた手を気にしながら、宮田は上着のポケットからキーを取り出した。
キーには小さなボタンが付いていて、それを押すとキーを刺さなくてもロックが開く仕組みだ。

車までは直線距離で約5メートル。ここからでもボタンひとつでロックは解除できるはずだ。
しかし、ベタついた手が気になる宮田は、その小さなボタンをうまく押すことができない。

「悪いけど投げるよ〜」

「いいわよ〜、パス、パス!」

三村は、まるで昼休みのバレーボールのノリだ。
キーはみごとに宮田の手から、三村の手に渡った。

「その、小さなボタンを押せば開くから」

「へぇ〜、おもしろ〜い。前からこんなでしたっけ?」

「ああ」

お互いに前回、三村がこの車を運転しなければならなくなった時は、それどころではなかったことをすっかり忘れかけていた。


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