THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行21 2/10


■マークIIはドロドロ

2月11日の建国記念日は金曜日で、土曜、日曜と合わせれば三連休だ。

10日の夜、24時間営業の洗車場で愛車をピカピカに磨き上げた宮田は、早朝、自宅の狭いカーポートに立って驚嘆した。

夕べは深夜になって、どうやら雨・・・ひょっとすると雪が降ったらしい。
せっかく磨き上げた愛車の白いマークIIは泥水でもかけられたように汚れていた。

やっぱりカーシートをかぶせておくべきだった・・・。

夕べ一度ウチに上がってから、念のためカーシートをかぶせようと思い立った宮田は妻に尋ねた。

「おい、あの〜、車にかぶせるシートな。あれ、どこにしまったっけ?」

「確か庭の物置じゃないかしら・・・。でも、どうして?」

「あ、いや、何。念のためかぶせておこうかと思って・・・」

「何でぇ? 寒いんだから、よしなさいよぉ」

「しかし、良樹の門出だし・・・」

11日には良樹の高校受験があった。宮田は朝、車で良樹を駅まで送ると約束している。
で、その後は・・・これからの仕事について、ちょっと考えこどや調べものもあるので「ひとりで」出かける・・・と妻には話していた。

「いいじゃない何もそこまでぇ・・・」

「だが、縁起ということもあるし」

「どんな縁起よぉ・・・。そんなことより、今から庭に出て、物置あさったりしてたら風邪ひいちゃうわよ。あなたが風邪ひいたりしたら、もっと困るでしょうに?」

「ウン。それもそうだ」

で、結局カーシートはかぶせなかった。

今から洗っていたりしたら良樹を送る時間がなくなる。
まさか、良樹にバスで行けとは言えないし・・・。

玄関先に良樹が出てきた。
見送る妻が「あ、いけない」と言って、あわてて何かを取りに入った。
戻ってきた妻の手には、おばあちゃんが送ってくれた太宰府のお守りがあった。
良樹は、それを素直に受け取ると「じゃ、行ってくる」と言って車の助手席側にまわった。
「がんばってね」と見送る妻の顔は少し心配そうだ。

「じゃ行って来る」宮田も妻にそう言って、運転席のドアを開ける。

「あなた!」

「ん?」

「事故なんか起こさないように気をつけてよ」

「もちろんだ」

「あなた!」

「あ?」

「何時頃、お帰りになるの?」

「そ、そうだなぁ・・・。お、いかん、時間がないな。後で連絡する」

宮田の運転するドロトロのマークIIは、自宅を後にした。


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