THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行20 12/12


■ほのかな期待

薄暗い階段の途中で携帯電話の液晶ディスプレイがポーッと光った。
目をこらして見ると『留守電着信』という文字が点滅している。

あわてた宮田は『留守』と書かれたボタンを押した。留守電の再生は、これでいいはずだ。

ポッポッポッ・・・。

携帯電話がつながり始めた。必死で電話を耳に押し当てる宮田。

「こちらは、留守番センターです。お預かりしているメッセージは・イッケン・です」

宮田は、ゴクリと息を飲んだ。

「課長・・・三村です。いろいろ・・・お疲れさまです。あの・・・お願いがあるんです。今度の連休。もし、よかったら前に連れていっていただいた、あの場所へ・・・。もう一度、連れて行っていただけませんか?」

メッセージは、そこで切れていた。再び機械的なアナウンスが聞こえる。

「このメッセージをもう一度聞くには数字の1を・・・」

暗闇の中、宮田はつぶやいた。

「1、1、1・・・」

メッセージの再生がはじまる。

「課長・・・三村です。いろいろ・・・」

この動作を3回ほど繰り返した後、宮田は胸をはった・・・間違いない!!

瞳に光を取り戻した宮田が、階段を下りて行くと、ちょうど妻が帰ってきた。

「キャッ! あなた?! あ〜、ビックリした。どうしたなですぅ、そんなとこで?」

「いゃあ、何でもない。まぁ、人生苦あれば楽あり・・・ってことかな」

「??? あ! そうそう、眼鏡。できたっていう電話があったから、今取ってきましたよ」

「眼鏡? ああ、銀プチの。・・・まだ、当分しまっておいてくれ」

その後、洗面所に入った宮田は、まるで歌うように・・・うがいを5回した。

・・・以下、次回は
2000年2月11日(金)建国記念日に特別掲載予定

第21話「もう一度、不倫旅行<前編> 」

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