THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行20 11/12


■自分の夢

一時は高校受験を辞めると言った息子が、目の前で懸命に勉強をしている。
宮田は、とにかくそのことに安心し・・・嬉しくなった。

良樹にどんな心境の変化があったのかは、よくわからない。
ヘタに聞いてヤブヘビになっていけないし・・・。
ただ、これだけは言っておきたくなった。

「良樹!」

「なぁに」

「・・・頑張れよぉ」

「ああ・・・一応ね」

「とにかく頑張って・・・見返してやれ!!」

ふとペンを止めた良樹が、再び宮田を見た。

「見返すって・・・誰を?」

「誰って・・・誰でも・・・さ」

「・・・・」

「とにかく自分の夢を実現するために・・・頑張れ」

「うん・・・とうさんも、な」

「あ、ああ」

これ以上、勉強の邪魔をしてもいけないと思った宮田は、ようやく良樹の部屋のドアを閉じた。

自分の夢・・・自分の夢って、いったい何だろう?
そんな思いが心をよぎった時・・・携帯電話の電源を入れておかなかったことを宮田は後悔した。

階段の途中・・・うちの中で最も携帯の感度がいいこの場所で、宮田は内ポケットから携帯電話を取り出すと、電源を入れてみた。


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