THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行20 7/12


■山本の宣言

席に戻った宮田は、いてもたってもいられなくなり・・・内線電話を人事部長につないだ。

「人事は予定通り発表したよ。もう見たかね?」

人事部長は平然と言った。

「はぁ・・・その件で、ちょっとお話したいことがありまして・・・」

「話? これから来客があるんだが・・・まぁ、ちょうどいい。じゃあ30分後に来てくれ」

「わかりました」

電話を切って周囲を見回す。誰ひとり仕事が手についている者はいない。
・・・それは宮田にしても同じだった。

人事部長にああは言ったものの、今さら恨み言を言ってもはじまらないのはわかっている。
ただ、柳をはじめ、これから本社に残る者たちのために・・・こういうやり方はよくないと、ひとこと言ってはおくべきだろう。

しばらくすると珍しく元OL3人組の山本がやってきた。

「課長」

「何だね?」

「実は私・・・辞めようと思ってたんです」

「辞める?」

「ええ。もう少ししたらお話しするつもりだったんですけど・・・。今日いきなりあんなカタチで人事が発表されたんで、辞表もできてませんけど先にお話ししておきます」

「そうか・・・」

「結婚するんです!」

あまりにハッキリと山本が言うので、周囲が一瞬聞き耳を立てた。
普段は、そう一生懸命に仕事をしてとも思えないのに・・・山本は山本なりに怒っているんだと宮田は思った。

山本の言葉は「私は結婚して自分の人生を作るの。こんな会社のことなんか知ったこっちゃないわ」という風に・・・誰の耳にも聞こえた。

ことに大阪行きが決まった柳と、東京に残る三村の心には・・・。
ズシリと大きなプレッシャーを与えるひと言だった。


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