THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行19 14/14


■それぞれの結論

玄関の外まで出た妻が妹にささやく。

「あんた・・・本当に大丈夫なの?」

「大丈夫だって・・・。こう見えてもアタシ、男を見る目は確かなんだから・・・カメラマンだし」

「また、そんなこと言って・・・。でも正直、来た時は驚いたけど・・・いい人みたいね。とりあえず、母さんには私から電話しておくわ」

「お願いしまっす」

と、世理子は裕美子に両手を合わせる。

「それはそうと・・・おねえちゃんの方こそ、アタシに相談があったんじゃあ・・・」

裕美子は、ふと夜空を見上げた。
昼間とはうって変わって、雲ひとつない空。一面に星のまたたきが見えている。

「いいのよ。あんたもそれどころじゃないだろうし・・・私は大丈夫」

「そう?! それならいいんだけど・・・」

「それより、あんた。体大切にしなさいよ。まだまだ冷えるし・・・もう、ひとりの体じゃないんだから」

「うん。ありがとう」

2人の後ろ姿を見送って妻が玄関に戻ると、宮田がまだひとりで玄関先に立っていた。
よく見ると、眼鏡をはずしている。

「どうしたんです? あなた」

宮田は両目をつぶって言った。

「さぁ・・・ひっぱたいてくれ」

宮田の両手は真っ直ぐに下げられ、拳がしっかりにぎられている。
妻は何だか、おかしくなった。

「バカね、あなた」

「ああ、バカだとも。さぁ・・・」

「素直にごめんなさいって言えばいいのに・・・」

「しかし、それじゃあ済まんだろ?! だから・・・」

薄目を開きながら宮田が言う。

「そうですか・・・そこまで言うんなら・・・」

宮田は再び両目を閉じた。

「ペチン!」

そう言いながら妻は宮田の頬を軽くなでた。

「これで、おあいこ・・・ね」

その頃、2階の部屋に戻った良樹は、机に向かって必死に参考書を開いていた。
まだ、将来の自分については何もわからない・・・けれど。
とにかく英語は話せるようになりたい・・・と真剣に思い始めていた。

・・・以下、次週

2000年2月6日(日)掲載予定

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