THE THEATER OF DIGITAKE

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第19話 すばらしき家族

■宮田浩一郎の息子

今年高校受験を控える宮田浩一郎のひとり息子、良樹が生まれたのは、裕美子と結婚して3年後のことだった。
季節は春先。上着を着てオモテを歩いていると、やや汗ばむくらい暖かかったのを宮田は覚えている。

当時、外まわりの仕事が中心だった宮田は、その日病院から出産の知らせが来るまで珍しく社内で雑務をし、連絡があると仕事にかこつけて、そそくさと外出した。
上司にも同僚にも見え見えの行動だったが、さすがに攻める者はいなかった。
に、してもそれを正直に言えないところが宮田・・・である。

初対面した我が子は、お世辞にも可愛いとは言えなかった。ただの赤ザル・・・正直、これが第一印象。
ようやく人間らしく見えるようになったのは生後数週間くらい経ってからだ。

良樹という名前は、初対面して仕事に戻る途中・・・。
あまり暑いので缶ジュースを買って立ち寄った公園でのこと。
木陰のベンチから見上げた、その木がリッパに感じたところから思いついた名だ。

自分は姉との2人姉弟。妻の裕美子は妹と2人姉妹。
自分たちの子供も最低2人はほしいと思っていたが、ひとり目に生まれたやんちゃな男の子に翻弄されて、妻が一時期、育児ノイローゼ気味になった。
そうして、2人目のことを先延ばしにしているうちに・・・とうとう一人っ子になってしまった。

良樹が満1歳の誕生日の時。
ケーキに立った火のついたロウソクを触ろうとしているのを見て、あわてて手を引っ込めさせた。

2歳の誕生日にも同じことがあって、叱りつけた。

3歳の誕生日の時のこと。
親がちょっと目を離しているすきに、とうとうロウソクの炎を触って軽い火傷をした。

しかし、4歳の誕生日には・・・。
良樹は絶対にロウソクに手を出そうとしなかった。

そんな息子を見て、宮田は痛烈に感じた。

「親の役目って・・・いったい何なんだ?」


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