THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行19 13/14


■Oh! マイ・ブラザー

「ごめんねー、平日だって言うのに遅くまで・・・」

玄関先に立った世理子が言う。

「Thank you」

宮田の正面に立った巨体のボブが珍しく真剣な眼差しで言った。
ワインが入ったせいもあって、やや口がまわるようになった宮田が笑顔で答える。

「You are welcome!」

その瞬間、ジワーッと涙を浮かべたボブが、いきなり宮田を両手で抱きしめた。

「Thank you! Thank you very much!! My brother!!!」

もがく宮田は苦しくて声も出ない。
まわりのみんなもあっけにとられて言葉を失った。

やがて世理子がハンカチを取り出してボブに渡すと、ようやく宮田は解放された。

ハァハァと大きく口で息をする宮田。
ボブは大きな体をまるめて泣きながら、何やらボソボソと世理子に話している。

「ボブの両親ってね・・・ボブが小さい時に離婚しちゃって・・・兄弟もバラバラなのね。だからボブにとっては家族を持つことが夢で・・・。今日は義兄さんとこの家族に囲まれて、自分もようやく家族を持てるんだっていう実感がわたいもんだから・・・すごく感激しちゃったらしいの・・・」

「そ、そうか・・・。それは、よかった。じゃ、また、いつでも遊びにいらっしゃい」

世理子が宮田の言葉を訳すと、ボブは宮田を見て、また大きく両手を広げた。
一瞬、身を引く宮田。
しかし、今度はそのまま大きくおじぎをしただけで・・・そのまま玄関を出て行った。


Next■